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光の干渉現象

 光には波としての性質(波動性)が備わっています。その証拠となる現象のひとつが干渉(かんしょう)です。光の干渉現象から光の波動性を議論するのが正しい順序ですが、ここでは光の波動性を前提にして、説明を進めます。正しい順序の議論は物理の教科書を参照してください。

赤色の光 紫色の光

「光の波動性と光の色」
 我々が見ることができる光(可視光)には様々な色の光(赤色の光、黄色の光、緑色の光、紫色の光・・・)が存在します。赤色の光の波と紫色の光の波の様子を、上のイラストに表しました。波なので、上がって山となり、次に下って谷となります。そして、また上がって山となります。そして、また下がって谷となります。この様に、同じ状態(イラスト中の高さが同じになる状態)が繰り返し発生します。波の状態が元に戻るまでに波が進み距離(山から山までの距離と考えれば理解が楽です。)は波長と呼ばれています。左上と右上のイラスト中に描かれた、波長の長さに注目してください。赤色の光の波長が、紫色の光の波長よりも、長くなっています。つまり、光の波長は、光の色彩によって異なっています。下表に、光の波長の目安を色彩別に掲載しました。単位はナノメートルです。光の波長の短いことが良く分かります。

色彩別の光の波長の目安
(1ナノメートル=10億分の1メートル)
色彩 波長の目安(ナノメートル)
650〜770
588〜650
550〜588
492〜550
455〜492
380〜455

「波の干渉現象」
 同じ波長を持つ波の重なり合いを考えてみましょう。まず、山と山、あるいは、谷と谷が一致するように2つの波が重なり合うと、下方の上側の図のように、山の高さが2倍、あるいは、谷の深さが2倍の波になります。また、山と谷が一致するように2つの波が重なり合うと、下方の下側の図のように、波の高さはゼロになります。この様に、波が重なり合って、強め合ったり、弱め合ったりする現象を干渉といいます。

波の山と山(谷と谷)による干渉

波の山と谷による干渉

 七色の宝石が様々な色彩で輝く原因は光の干渉です。赤い部分では赤い光の干渉が発生することによって、赤い光が強められ、赤く輝きます。青い部分では青い光の干渉が発生することによって、青い光が強められ、青く輝きます。
 余談ですが、波の干渉現象によって波が消される原理を利用した例を紹介しておきましょう。それは、周りの雑音を消してくれるノイズキャンセリング・ヘッドフォンです。音にも波としての性質があるので、雑音を消すことが可能になります。ヘッドフォンには周りの雑音を拾うために、マイクが内蔵されています。拾った音を、干渉によって雑音と消し合う音に変換し、ヘッドフォンに内蔵されたスピーカーから出すことによって、雑音を消しています。

「油の薄膜による光の干渉現象」
 七色の宝石で生じる光の干渉現象を理解するために、まず、身近な光の干渉現象を理解しましょう。多くの方が、水たまりの表面が七色に輝いているのを見たことがあると思います。よく見ると、水面には油の薄い膜が広がっており、その膜で反射された光が七色に輝いています。なぜ、七色に輝くのか、その理由を光の干渉によって、説明しましょう。
 水面に浮かぶ油によって、光は2つの経路によって、反射されます。1つは油の上面による反射光です。下図では赤い矢印で示されています。もう1つは、油の中に侵入し、油と水の境の面で反射された反射光です。下図では青い矢印の経路になります。ここで、最終的な反射光の進行方向が同じになっている点に注目してください。その理由は、光が入射する角度と反射する角度は同じであることと、光が油に入る時に曲がる角度と出る時に曲がる角度が同じであるからです。これら2つの経路の存在が光の干渉現象を発生させる原因となっています。

油の薄膜による2つの経路の反射光

 では、具体的に、油の薄膜による光の干渉現象を見ていきましょう。まず、下図を見てください。太陽からの光が斜め上方向から入射する図です。まず、点Aで油の表面に当たる光を考えます。光の一部は油に侵入し、点Bで反射され、点Cから観察者の方へ出ていきます。次に、点Cで油の表面に当たる光を考えます。光の一部は点Cで反射されます。これら2つの経路を経た光は、最終的に方向に進行するので、点Cで重なり合います。その際、ある条件が成り立てば、干渉現象が発生します。

油の薄膜による光の干渉現象

 その条件とは何でしょう。点Aに光が届いた瞬間、点Cへ向かっている光は点Dまでしか到達しておらず、点Dと点Aでは、光の波の状態は完全に同調しています。点Dが山の時は点Aでも山であり、谷の時は谷です。もし、点Cに到達したの波の状態も、下図のように同調していれば、干渉によって波が強められます。しかし、強められる光の色は限定されています。なぜなら、点Aから点Cへの経路を進む時に必要な波の数と、点Dから点Cへの経路を進む時に必要な波の数の差が、点Cに到達したの波の状態を同調されるような数字でなければならないからです。この条件は、光の色彩が異なると、変わります。なぜなら、色彩が変われば、波長も変わるからです。緑色が強められる条件では、緑色の光のみが強められます(緑色に輝きます)。他の色彩の光では、同調しません。この様に、強められる光の色は限られています。しかし、この強められる条件は、光が油の表面に入射する角度によって、変化します。水面が揺れると、油の表面の角度が微妙に変わり、光の入射する角度が変化します。すると、干渉が生じる光の色も変化します。これが油による反射光の色彩が七色に変化する理由です。


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