南極石

化学式:CaCl2・6H2O

冷蔵庫で冷やすと、針状結晶となる 室温では、溶けて液体となる
南極石(結晶) 南極石(液体)
Bristol Dry Lake, San Bernardino Co., California, U.S.A.

 南極石(なんきょくせき)はカルシウムと塩素を主成分とするハロゲン鉱物です。無色透明の針状結晶の集合体(左上の写真)を形成しますが、室温では溶けて透明な液体(右上の写真)へ変わります。結晶を観察するには、冷蔵庫で冷やすことが必要です。南極石は、乾燥した地域の塩湖で、蒸発乾固物として生成します。展示品は、米国カリフォルニア州にあるブリストル乾湖で採取された標本です。
 南極石は、日本の南極観測隊によって、1962年12月に、南極大陸のビクトリアランドにあるドンファン池で発見されました。鉱物名は発見地に因んでいます。当初、『ドンファン石』という名称が提案されていましたが、新鉱物鉱物名委員会で却下され、南極石へ変更されました。参考までに、ドンファン池という呼び名は、発見時にヘリコプターを操縦していた2名のパイロットの名前に由来します。

コラム「なぜ、南極に池が存在できるのか」
 南極大陸は氷と雪で覆われた大地と思われがちですが、無雪地帯も存在します。南極石が発見されたドンファン池は、無雪地帯であるドライバレー内に位置し、凍らない池として有名です。気温がマイナス58℃の時でも、凍結しませんでした。その理由を簡単に紹介しましょう。
 水に塩分が含まれていると、水の凝固点降下(水が凍る温度が低くなる現象)が起こります。そのため、氷点下でも水は凍りません。凝固点降下は、塩分濃度が高いほど、大きくなります。ドンファン池の水には高濃度の塩分(海水の18倍以上)が含まれているため(比較:死海の水の塩分濃度は海水の約8倍程度です)、凝固点降下が強く起こります。そのため、南極大陸の極寒の気温でも、池の水は凍らないと考えられています。


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