イブナ隕石

炭素質コンドライト(CIコンドライト)
イブナ隕石
Ivuna, Mbeya, Tanzania

1938年落下、価格(1グラム):¥110000

 イブナ隕石は、1938年12月16日17時30分頃、タンザニアのイブナに落下しました。数個の隕石の落下が観測されましたが、回収できたのは1個のみで、重量は704グラムでした。イブナ隕石はCIコンドライト{"I"はアルファベットのI(アイ)}と呼ばれるグループに分類されています。CIコンドライトは6個(Alais, Ivuna, Orgueil, Revelstoke, Tonk, Yamato82162)しか知られていない大変貴重な隕石です。ちなみに、"I"はイブナ(Ivuna)の"I"です。
 CIコンドライトにはコンドリュール(アエンデ隕石を参照)と呼ばれる小球体が含まれていません。にもかかわらず、コンドライトに分類される理由は、元素組成が他のコンドライトと似ているからです。CIコンドライトの大部分は微細な含水珪酸塩鉱物{スメクタイト(層間に水を有する層状粘土鉱物)や、蛇紋石:Mg3Si2O5(OH)4、など}で構成されています。ほかには、少量の鉄鉱物(磁鉄鉱、磁硫鉄鉱など)が含まれており、方解石などからなる鉱物脈も存在します。
 CIコンドライトの化学組成は大変興味深い物になっています。水、炭素、イオウなどの蒸発しやすい成分が、隕石の中で最も多く(水:20%、炭素:3.5%、イオウ:6%)含まれています。また、蒸発しにくい元素の組成が、太陽大気の組成とよく一致します(下のグラフ参照)。よって、CIコンドライトは最も原始的な隕石グループであり、太陽系全体の平均的な元素組成を求める(求め方はコラム参照)のに重要な情報を含んでいると考えられています。

太陽大気およびCIコンドライトの元素組成の比較

太陽大気およびCIコンドライトの元素組成の比較
(10-1は0.1のことです。10-2は0.01、10-3は0.001です。)
個々の元素が存在する割合は、ケイ素(Si)の存在する量で割った値です。例えば、存在する割合がケイ素と同じなら1であり、10倍存在すれば10になります。グラフ内の斜めの直線は、太陽大気内での存在する割合と、CIコンドライト内での存在する割合が同じ点を結んだものです。つまり、直線に乗っている元素の存在割合は、太陽大気中でもCIコンドライト中でも同じであることを意味します。ほとんどの元素が同じである(外れる元素についてはコラム参照)ことが分かります。

コラム「元素の宇宙存在度」
 太陽系の天体は様々な元素で構成されています。では、どのような割合で元素は存在しているのでしょう。ここでは、元素の太陽系全体での存在する割合(昔から宇宙存在度と呼ばれている)を推定する方法を紹介しましょう。
 太陽系に存在する元素の99%以上が太陽に存在していることより、太陽の元素組成が太陽系全体の元素組成を代表していると判断することが出来ます。太陽は気体の天体であり、光り輝いている部分(光球という)の外側を取り囲んでいる部分(彩層という)に存在する太陽大気の元素組成が、太陽全体の組成をある程度代表していると考えることができます。太陽の光をプリズムを通してやると、7色の帯に分かれます。7色の帯を精密に観測すると、所々で黒線(フラウンホーファー線)が走っていることが分かります。この線が発生している原因は、太陽大気に存在する元素によって、特定の色の光が吸収されているためです。(地球のオゾン層によって紫外線が吸収されているのと同様の現象が、太陽大気の中でも発生していると理解してください。)吸収されている光の色と吸収の程度を調べることによって、太陽大気の元素組成を推定することが出来ます。
 次に、太陽大気の元素組成データと、隕石の中で最も原始的と考えられるCIコンドライトの元素組成データを、元素別に、グラフ上に点で表すと、上のグラフのようになります。多くの元素データが斜線上にあり、太陽大気の元素組成データとCIコンドライトの元素組成データが同じであることが分かります。両方のデータの正確さを比較すると、CIコンドライトから得られたデータの方がはるかに正確です。よって、太陽大気のデータとCIコンドライトのデータが一致する元素については、CIコンドライトのデータを宇宙存在度として採用します。
 グラフを観ると、明らかに斜線に乗らない元素のグループがふたつあります。まず、リチウム(Li)とホウ素(B)とベリリウム(Be)は太陽大気中の方が少なくなっています。この原因は、これらの元素は太陽内部の核融合でのヘリウムの生成に消費されているからです。よって、元々の存在度を保持しているCIコンドライトのデータを宇宙存在度として採用します。次に、窒素(N)や炭素(C)などの蒸発しやすい元素です。これらの元素はCIコンドライトから失われたと考えられます。よって、太陽大気のデータを宇宙存在度として採用します。
 ところで、太陽大気の分析において測定することが出来ない元素がいくつか存在します。その中には、希ガスのように蒸発しやすい元素も含まれています。これらの元素の宇宙存在度の推定には、太陽宇宙線(フレアーと共に発生する高エネルギー粒子)の分析データ、元素合成理論による推定データ、宇宙存在度から推測される法則(Suess法則)からの推定データ、太陽よりも表面温度が高い恒星の測定データなどが使利用されます。

ほんもの隕石観察セット ●隕石標本 ● 隕石標本2  ● 隕石標本3


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